「無二的人間」 山本空外著2 [無二的人間]
序記
『無二的人間』という題で上木する本書には、また格別の思出と期待があって、じつに感無量である。長年のわたくし自身の思想と生活がこの論点に集中し続けたことでもあるし、なお無二的人間としてではなければ、文化も平和も名ばかりに終わるしかないと考えているからである。
まにあわせで、一方的で、その時がすぎると、みなそれだけの終る夢のような大小事件の走馬灯に似た一角に帰する人生のみとしたら、たとい大半がそうであっても、それでは生きるねうちに乏しいというのが、すでにわたくしの青年時代からの人生観の根本であった。
「世間虚仮」といわれるように、世間一般が迷妄であるにしても、いろは歌でさえ「有為(うゐ)の奥山今日越えて、浅き夢見じ酔ひもせず」と、すでに小学校時代教示されたところを、一人ひとりなりに生活できないはずがあろうか。
2012-06-11 07:15
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